温泉の効果を効率的に上げる「運動、休養、栄養」の三位一体

「運動、休養、栄養」の相乗効果を求める「湯探歩(ゆたんぽ)」について…

 「運動」「休養」「栄養」は、いずれも健康に必要な要素です。そして、単独でも健康増進に効果を発揮しますが、バランスを考え相互作用の中で実施すると、相乗効果を発揮します。

 温泉を主体に考えますと、温泉の効能を発揮させるためには、運動(ここでは、ウォーキング)と栄養を取り入れたほうが良いということになります。

 そこで、この章では、温泉の正しい入浴法、妙高高原でのウォーキング、食事について紹介して参ります。

 なお、妙高高原では、「運動、休養、栄養」を総合的に活かし、健康増進に役立てようという活動を「湯探歩」と呼んでいます。

湯探歩

温泉の効能

 温泉はどうして効能があるのでしょうか。「もちろん効能成分があるから」と考えがちですが、これ以外にも色々な要素が影響しあって効能を発揮するのです。これを「複雑系(相乗効果、シナジー効果)」と言います。

1.物理効果

温熱効果
熱い温泉(42℃以上)は、緊張、興奮の自律神経「交感神経」が優位に立ち、しっかりと目が覚めた状態となります。一方、ぬるめの泉温(37〜40℃)の温泉は、気持ちを鎮める働きをするりラックスの自律神経「副交感神経」が優位に立ち、落ち着いた気分になります。
また体が温まることにより血管(特に抹消血管)が広がり新陳代謝が高まり、体内の不要物の排泄を促すのです。例を挙げると、疲労回復は、疲労物質「乳酸」が排出されるための効果です。単純に温熱効果により血行が良くなると体に良いと考えてもよいでしょう。
なお、日本人がもっとも気持ちの良いと感じる泉温は「42℃」です。気温よりはるかに高いお湯が体に負担をかけるものの、気持ち良さからくるリフレッシュ効果が望めます。
水圧効果
体表面にかかる静水圧により全身に圧力がかかり、内臓が刺激され、内臓運動となります。つまり、天然マッサージの状態です。
脚には全血液量の約三分の一が集まり、この血液が心臓に送り返されるため「脚は第二の心臓」と言われることがあります。この脚の血液は、陸上では、重力が邪魔をして血液が心臓まで上がりにくくなります。ところが、入浴すると、水圧で血管が細くなり、血液が心臓に向かって押し上げられます(ポンプアップ効果)。その結果、下肢の静脈の流れが良くなり、血液やりンパ液の循環も活発になつていくのです。なお、全身浴ではこの水圧により心臓への負担が大きいのですが、半身浴や足浴では静水圧が減少するので、心臓への負担が少なくなります。お湯に肩までつかった時、体の表面積全体では、なんと500kgから1トンもの水圧がかかる計算になるのです。
浮力効果
温泉に首まで浸かると、体重は約十分の一になり、体を自由に動かせるようになります。体が軽くなった感覚により筋肉が緩み、脳波が「α波」のりラックスした状態になりやすいようです。また、体の各部分を早く動かすと、水の抵抗力が加わり筋力の強化になります。これを利用して筋力の弱った人や運動機能の低下した人のりハビリテーションにも利用されます。
温熱効果と水圧効果により、「ナトリウム利尿ホルモン」が刺激され、利尿効果が高まります。これが老廃物の排泄につながりますし、痛風などの防止にもなります。

2.転地効果(心理効果)

 日常生活を離れ、環境に恵まれた温泉地に行くことにより五感に刺激を受けると、脳内のホルモンを調節する内分泌系や呼吸、消化といった生命維持活動をつかさどる自律神経の中枢のスイッチが入ります。そこで、ストレスを解消し、精神疲労や病気に効果を発揮するのです。

 「澄んだおいしい空気」「森林浴によるりラックス」「避暑によるさわやかさ」など、自然環境に恵まれた温泉地ならではの効果が期待できます。

 海は波の音の「1/fのゆらぎ」が心を癒すとともに、いわゆる潮風の「海塩粒子」が体を活性化させます。

 一方、山の環境としては、標高300〜800mの森林の多いところが転地効果が高いです。森林浴をすれば、樹木から発せられる成分の「フィトンチッド効果」により心と体が癒されます。

 転地効果は、5〜6日で活発になり、1ヶ月を過ぎると薄れます。もちろん1泊2日でも転地効果、免疫力向上効果は得られますが、できれば「滞在」をお勧めいたします。

 「海の温泉地」「高原・山の温泉地」といったように環境を変えて温泉めぐりをするのも効果的です。


3.薬理効果

温泉の成分を皮膚から吸収することにより得られる効果です。もちろん、効能成分(泉質)により、効果は異なります。

【一般適応症】
「単純温泉」の効能は「一般適応症」にあたり、すべての泉質に共通する適応症です。
一般適応症(入浴による適応症)
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え症、病後回復期、疲労回復、健康増進
ただし、「うちみ」「くじき」は、発症直後の熱、腫れがあるときは禁忌と考えましょう。

【泉質別適応症】
単純温泉以外の泉質には、これに「泉質別適応症」が加わります。
泉質別適応症
泉質入力による適応症鉱泉による適応症
単純温泉上記一般適応症
塩化物泉切り傷、火傷、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病慢性消化器病、慢性便秘
炭酸水素塩泉切り傷、火傷、慢性皮膚病慢性消化器病、糖尿病、痛風、肝臓病
硫酸塩泉動脈硬化症、切り傷、火傷、慢性皮膚病慢性胆のう炎、胆石症、慢性便秘、肥満症、糖尿病、痛風
ニ酸化炭素泉高血圧症、動脈硬化症、切り傷、火傷慢性消化器病、慢性便秘
含鉄泉月経障害貧血
硫黄泉慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病、高血圧症(硫化水素型)、動脈硬化症(硫化水素型)糖尿病、痛風、便秘
酸性泉慢性皮膚病慢性消化器病
放射能泉痛風、動脈硬化症、高血圧症、慢性胆のう炎、胆石症、慢性皮膚病、慢性婦人病痛風、慢性消化器病、慢性胆のう炎、胆石症、神経痛、筋肉痛、関節痛
※温泉には上記のような「飲泉」による適応症が認められておりますが、ほとんどが保健所による「飲用」の許可をされておりませんのでご注意ください。
※硫黄泉(硫化水素型):遊離硫化水素を含むもの。 硫黄泉(硫黄型):硫化水素イオンを含むもの

【禁忌症】
 温泉入浴を控えた方がいい症状が「禁忌症」で、入浴の禁忌症として、下記が挙げられています。この他に、飲泉の禁忌症もあります。
急性疾患、(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、その他―般に病勢進行中の疾患、妊娠中(とくに初期と末期)

【泉質別適応症早見表】
別ウインドウで表を見る ←クリックすると表示されます。

4.水温による自律神経の働きの違い

 自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」があります。「交感神経」は心臓などの動きを活発にさせる「動」の神経で、体を「緊張」「興奮」させます。「副交感神経」は、緊張、興奮を抑える「静」の神経で、体を「リラックス」させます。

水温により、いずれか優位に立つので、 目的的に応じて入浴法を変えたいものです。

 一般的な目安として、42℃程度は気持ち良い温度ですが、交感神経を刺激し、緊張をもたらし、38℃程度は、ぬるく感じますが、副交感神経を刺激し、リラックスをもたらすと考えるとわかりやすいです。
 また、イメージとして、自律神経のうち、熱い湯では交感神経のスイッチが入り、ぬるい湯では副交感神経のスイッチが入ると考えればわかりやすいです。この水温と自律神経(交感神経、副交感神経)のはたらきの関係が、入浴目的に応じた入浴法のポイントとなってきます。
 一般的に、各温泉地の風呂は、もっとも気持ちのよいと言われる42℃のものが多いです。「高温浴」にて「活カ」を得られます。湯治が目的でしたら、「高温浴」を「半身浴」にておこなったり、ぬるめの温泉を利用したりすればよいのです。

「不感温浴」 34〜37℃

 入浴に際して熱くも冷たくも感じない温度を「不感(中立)温度帯」といいます。この水温域に入浴すると、エネルギーの消費量がもつとも低くなり、その範囲より高くとも低くとも、体温を保持するために、エネルギー消費量が増加する傾向にあります。日本人では35〜36℃前後、欧米人はこれより1〜2℃低い温度となっているようです。体温に近いこの不感温度の入浴では、脈拍・血圧・呼吸に殆ど影響を与えないので、心疾患のある人でも心配なく入浴できます。
 通常、30分〜2時間くらい入浴します。鎮静作用があり、おもに精神障害、高血圧、不眠症などに利用されます。水中リハビリテーションに有効な水温でもあります。


5.温泉入浴による「発汗」の効果

 現代人は、運動不足、クーラーの使用などにより汗をかきにくくなり、汗腺の機能が低下している傾向にあります。発汗は大切なことですので、運動により汗をかく習慣をつくりたいものですが、いざ実践となると難しいものです。そこで、手っ取り早く、日常おこなっている入浴により汗をかきましょう。

 体には、汗でなければ排出できない老廃物もあります。水銀をはじめとした重金属系の物質などがそれにあたります。重金属系の物質が体内に蓄積すると、頭がボーっとして判断力が低下する、キレやすいなど、体に有害で現代人にありがちな数々の症状があらわれます。一方、ミネラルなどあまり汗と一緒に排出させたくない物質もあります。汗と一緒にミネラルが排出してしまうのも汗腺の退化の影響です。

 また、発汗とともに大切なのが尿で体の老廃物を排泄することです。老廃物には汗でなければ排泄されにくいものと、尿でないと排泄されにくいものがあります。尿酸値が高く痛風の傾向がある場合は尿で老廃物を排泄する必要があるのですが、特に夏は痛風の原因となるプリン体を多く含むビールを飲む機会が多い一方、汗をかきやすいので、尿の量が減り、尿酸値が高まりやすいのです。

 入浴による温熱効果と水圧効果で「ナトリウム利尿ホルモン」を刺激するので、正しい水分補給と入浴で汗と尿をバランスよく出しましょう。

 そこで、下記のような習慣をつくりましょう。

  1. 長湯ができ、発汗を促進する「分割浴」「半身浴」などの入浴法を身につけましょう。
  2. 食物以外からも水分を摂りましょう。1日1.5〜2リットルが目安です。ポイントとして、喉が渇く前に、適量の(1回につき150cc程度)の水を摂るようにしましょう。

※入浴による発汗は、「毒を出す」という意味では健康的なのですが、一方で入浴疲労も起こしてしまいます。一日の始まりの「朝の入浴」、「高齢者の入浴」「スポーツ前の入浴」は、入浴疲労を起こす前にあがりましょう。
※風呂上りの目安は「額があせばむ程度」です。玉のような汗が出る前にお風呂からあがりましょう。

6.妙高高原ならではの効果

 前述「転地効果」の一つですが、妙高高原の良さとして、適度な標高が挙げられます。妙高高原を代表する赤倉温泉の標高は、約800mです。地元の平野部と比べても5℃の気温差があります。雲、霧の影響や緯度差により更に大きな気温差が生じることもあります。

 涼しさが気持ち良さ(リラックス)を与えるのはもちろんのこと、スポーツにおける高地トレーニングの原理で、知らず知らずのうちに心肺機能が鍛えられます。標高約800mの赤倉温泉では、苦しさを感じることなく、この効果が期待できるのです。

 高血圧等の症状緩和で湯治をおこなう場合は、標高1,000m以上の空気が薄いところは適さないといわれます。その中で「転地効果」を考えると、標高300〜800mの森林の多い高原地帯がよいといわれていますが、「赤倉温泉」(800m)「新赤倉温泉」(700m)、「池の平温泉」(750m)、「妙高温泉」(550m)、「杉野沢温泉」(700m)がそれにあたります。

 一方、「燕温泉」(11,000m)、「関温泉」(900m)には、健康な方が心肺機能を向上させるはたらきがあります。また、「笹ケ峰」(1,300m)は、本格的な「高地トレーニング」にも利用されます。

 「大気浴」「森林浴」など、妙高高原ならでは良さをお楽しみになりながら、ゆっくりと温泉街を散策くださいませ。

赤倉ホテルからのお知らせ温泉ソムリエとは有縁講 - 親鸞聖人ゆかりの宿にて妙高高原で健康になろう